不登校・思春期外来とは
主に「学校に行きたくない、または行けない」児童を対象とした不登校外来と、原因不明のさまざまな症状「思春期特有の不定愁訴」をもつ児童を対象とした思春期外来を合わせた外来です。
実際の診療では、不登校のお子様は思春期特有の不定愁訴を持つことが多く、症状の治療を行いながら不登校の支援を行うことが必要になってきます。
そのような複雑な症状と心のケアを行うための外来です。
不登校の診療とは
あまり皆様にはイメージがないかもしれませんが、不登校の診療を小児神経内科が担うことが少なくありません。当クリニックの医師は、小児神経内科として不登校のお子様・ご家族様を支援してきた経験があります。
不登校の定義:何らかの心理的、情緒的、身体的あるいや社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者をのぞいたもの
私は、不登校(およびその予備群)の診療には大きく3つの手順が必要であると考えています。それは「①診断」と「②治療」、そして「③リハビリテーション」です。
不登校における「診断」というのは、不登校に至る原因(精神的、身体的、環境的)を知ることです。精神的な未熟性が原因のこともあれば、学校などの環境が原因となることもあり、また単純な便秘や睡眠不足といった身体的な原因が見つかることもあります。
しかし、最も注意が必要なのは”本物の病気(貧血、甲状腺などの病気、学習障害など)”が隠れている可能性があることです。そのため、当クリニックでは初診時に詳細な問診と血液検査を行うことで不登校の診断を確認します。
*血液検査が苦手なお子様の場合、ご本人が納得できるまで検査を延期する場合もあります。
不登校における「治療」というのは、「診断」の結果で考えられた原因を除去することです。精神的に未熟なお子様は”信頼できる大人”に相談できるだけでも安心して症状が軽減することがあります。環境が問題となる場合には、ご家族と相談して環境調整の提案を行います。
また、”本物の病気”でなかったとしてもお子様が訴える症状(頭が痛い、お腹が痛い、不安で眠れないなど)を内服などで治療してあげることも重要です。症状を消してあげることでその後の「治療」や「リハビリテーション」をスムーズにすることができます。
私たちも頭が痛いと他人に優しくできなかったり、仕事に集中できないことがありますよね。子ども達においても同様です。
不登校における「リハビリテーション」というのは、”低下した社会性の再獲得”にあります。これが最も重要なステップになります。
学校における最も重要な役割の一つに社会性の獲得があります。つまり、学校に行けないということはその社会性を獲得できない・喪失する原因となります。そこで、喪失した機能(社会性)を再獲得(Re+Habilis)するには、外の社会と交流する場所(カウンセリングやフリースクール)を用意する必要があります。
*ちなみに、「家族となら話せる」ことは社会性を担保するわけではありません。あくまで社会とは外の世界であって、自宅(家族)は含まないと考えた方が良いでしょう。児童の社会性を図る上では自分のテリトリー(自宅)の外で、他人(家族以外)と関わることが必要です。
当クリニックではカウンセリングをすることで、お子様の社会性を再獲得する支援も行なっていきます。
多くの子供達にとって「世界」とは、特に学齢期(小学校〜中学校)においては、「自宅」と「学校」しかありません。学校に行けないくらいなら大丈夫と考える人もいるかもしれませんが、子供達からすれば世界の半分を失いかねない状況ともいえます。それはとても不幸なことです。
子供達の「世界」を守るためにも、不登校は適切な支援・治療が不可欠です。我々にその治療のお手伝いをさせていただきたいと考えております。
いつでもご相談をお待ちしております。
起立性調節障害
起立性調節障害とは、自律神経の調律が正常でなくなることでさまざまな症状(頭痛・眩暈・腹痛など)が生じる疾患です。特に思春期(小学校高学年〜中学生)好発することから、成長に伴って血管の調整機能が追いつかないことが原因の一つであると考えられています。
主な症状としては「朝起きられない」「立ちくらみ、めまい」「体を動かした時の動悸」「頭痛や腹痛」が挙げられます。
これらの症状は主に午前中に強く出やすく、不登校の原因にもなりうるために、「怠けている」と判断されてしまう可能性があります。しかし、これらの症状は思春期特有の不調として理解してあげる必要があります。
もし、これらの症状を認め、生活に支障をきたすレベルであれば治療の適応となります。
ちなみに、起立性調節障害の治療でご家族が導入しやすいのが生活習慣の工夫です。
ご家庭で可能な起立性調節障害の対策
- 1日1.5〜2L程度の水分と十分な塩分を摂取する。
- 立ち上がる時は急にではなく、ゆっくり30秒ほどかけて動く。
- 立っている時に足を交差するなど、足の運動を心がける。
- 眠る時には頭を少し高くしておく。
これらの生活習慣の工夫で症状の改善がない場合に薬物療法を検討していきます。
主な薬物治療 血圧を上げる薬 ミドドリン塩酸塩 リズミック
過剰な頻脈を抑える薬 プロプラノロール塩酸塩
その他 半夏白朮天麻湯
また、起立性調節障害では睡眠障害や不安神経症などが合併することがあるため、当クリニックでは医師によるカウンセリングを同時に行なっていきます。心配な症状などがあれば、ぜひご相談ください。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群は明らかな異常がないのにも関わらず、腹痛や便通異常(便秘・下痢)などの腹部症状が長く続いてしまう病気です。
過敏性腸症候群は思春期に問題となることが多く、ストレスで悪化することから不登校の原因となることも少なくありません。
また、多くはありませんが、特定の食物(小麦:グルテン不耐症、牛乳:乳糖不耐症など)が原因となることがあり、初診時の詳細な問診が必要となります。
過敏性腸症候群は便の性状によって「便秘型」「下痢型」「混合型」に分類されます。
便秘型は、文字通り便が出にくいことで腹痛や排便痛、排便時の出血などの症状が出てきます。原則は食生活の改善を指導することから始めますが、改善が難しい場合には便を柔らかくする薬と腸を動かす薬を併用して治療を行なっていきます。
下痢型は、文字通り便が下痢になることで登校できない、授業に集中できないなどの問題が出てきます。こちらも最初は食生活の改善を指導することになりますが、過剰な腸の動きを抑制する薬や漢方薬を併用することで治療を行なっていきます。
混合型は、上記の便秘型と下痢型の2つの特徴が混在している状態です。治療には、下痢型と便秘型を組み合わせた治療を行なっていきます。
では、ご自宅で可能な食事指導とはどのようなものがあるのでしょうか。近年、注目を集めているのが「低FODMAP食」療法です。
*FODMAPとは、発酵性の4種類の糖類を並べたものです。
F:Fermentable 発酵性の
O:Oligosaccharides オリゴ糖(小麦、玉ねぎ、にんにく、豆類)
D:Disaccharides 二糖類(牛乳、ヨーグルト)
M:Monosaccharides 単糖類(りんご、はちみつ、果糖、ブドウ糖)
A:And
P:Polyols ポリオール(キシリトール、キノコ類、シュガーレス菓子)
これらの糖類は小腸で吸収されにくく、大腸で発酵されやすい特徴を持ちます。小腸で吸収されないために水分を引き寄せて下痢を引き起こしたり、大腸で腸内細菌が過剰に糖類を発酵させることで大量のガス(おなら)を生み出し腹痛や便秘の原因となり得ます。
では、それらを全部除去すれば良いのかというと、小児の場合には治療が成長の妨げになってはいけないという大前提があります。
まずは、初診時の問診で症状にどのような特徴があるのか(便の性状、痛みの場所、どんな時に悪くなるのかなど)把握し、疑わしい原因(食物・習慣)を一緒に考えます。
考えた上で「まずは牛乳をやめてみようか」「小麦を減らしてご飯にしてみようか」と可能な範囲で試行錯誤を行なっていくのが現実的だと考えております。
高FODMAP:できれば控えて!❌
- 穀物:小麦(パン、パスタ、うどん)
- 野菜:玉ねぎ、ニンニク、ごぼう、アスパラガス
- 果物:りんご、なし、もも、ドライフルーツ
- 乳製品:牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム
- 豆類:大豆、納豆、レンズ豆、小豆
- 甘味料:はちみつ、人工甘味料(ソルビトールなど)
低FODMAP:積極的に食べてオッケー!⭕️
- 穀物:米、玄米、蕎麦(十割)、米粉
- 野菜:キャベツ、レタス、トマト、なす、ほうれん草、ピーマン
- 果物:バナナ、いちご、みかん、ぶどう、キウイ
- 乳製品:バター、チェダーチーズ、パルメザンチーズ
- タンパク質:肉、魚、卵、木綿豆腐
- 油・甘味料;オリーブオイル、砂糖、メープルシロップ
食事療法というのは根気のいる治療です。あまりにも食事制限のストレスが強いと、それだけでも症状が悪化してしまいます。
その場合にはカウンセリングを行いながら気持ちを整えていくのも重要になります。
もし、腹部症状でお悩みのお子様がいらっしゃいましたらぜひご相談ください。
朝起きられない子どもたち
思春期によく見られる問題として「朝に起きることができない」といったものがあります。私自身、小児神経内科として
しかし、よく見られる問題であるのにもかかわらず、ご家庭のみで対応するのが難しいのも現状です。当クリニックでも同様の症状を訴えるお子様を不登校・思春期外来で診療しております。
実は思春期の子どもたちにとって、「朝に起きることができない」のには複数の理由・原因が考えられます。まずはその理由・原因を整理してみましょう。
①夜に眠れないから、朝に起きることができない
②夜に眠ったとしても、途中で起きたり、眠りが浅くて十分に休息できない
③夜にしっかりと眠っているのにも関わらず、朝眠くて起きることができない
④夜眠眠れて朝目が覚めるが、起き上がると症状(頭痛やめまい、腹痛など)が強い
①から③は主に睡眠自体が問題となる場合です。
①は睡眠リズム(睡眠相)の障害であり、②は睡眠の質の障害と考えられます。
③は十分な睡眠時間を確保できているかどうかを評価する必要があります。実は十分な睡眠時間というのは個人差があり、しっかりと眠っているように見えても睡眠不足となっているケースも少なくありません。また、過眠症といった特別な病気もあるため注意が必要です。
④は脳は覚醒できるものの、身体(自律神経など)が覚醒できていない状態です。実は、睡眠障害というよりも前述の自律神経失調症としての側面が強いと考えられます。
これらの「朝に起きることができない」子どもたちの評価には睡眠日誌が有効と考えられています。まずは、お子様の睡眠リズムについて知ってあげることが大切です。
最後にご自宅でできる体内時計の調整方法についてご説明します。
ご家庭でできる睡眠リズム改善のための生活ルール
- 目が覚めたらカーテンを開けて10分ほど日光をあびる
- 朝起きやすいように寝室の環境を整える(暖かい、明るい)
- 30分以上の二度寝をさせない(15分程度のうたた寝ならOK)
- 朝食をしっかりととる
- 夜のゲームや動画視聴を制限する(夜のブルーライト制限)
- 入浴を就寝の90分前までに済ませる
- 午後以降のカフェイン(緑茶・紅茶・コーラなど)の摂取を控える
- 休日の寝溜めをさせない
上記のような生活指導で改善がない場合には内服治療の適応を検討することになります。
また、特定の日に起きられない場合(平日は起きることができないが、休日は起きることができるなど)には、ストレス要因があることも予測されます。
当院では生活指導や内服治療に加えてカウンセリングも同時に行うことを推奨しております。
もし、朝が苦手、起きれないといった症状でお困りの場合はぜひご相談ください。